ご挨拶


日本燃焼学会会長

三上 真人
MIKAMI, Masato

山口大学大学院創成科学研究科

 

 このたび,丸田薫前会長の後任として日本燃焼学会代表理事・会長を拝命いたしました.歴史ある本学会の会長という重責を担うことになり,たいへん光栄に存じますとともに身の引き締まる思いでございます.就任にあたり一言ご挨拶申し上げます.

 会員の皆様におかれましては,平素から本学会活動へご理解,ご協力を賜りまして,誠に有り難うございます.ご存じのとおり,昨年から学会事務および学会誌の発行が滞っており,ご不便とご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます.この問題解消のために事務局の移転作業を進めて参りました.皆様のご協力のおかげをもちまして,2025年度定時総会では事務局移転に関わる定款改正を行うことができました.事務局機能が正常化を迎えるまでには,まだもうしばらくお時間をいただくかと思いますが,引き続きご理解のほどお願い申し上げます.副会長の岡崎輝幸様(MHIソルテック),店橋護先生(東京科学大),専務理事の高橋周平先生(岐阜大)と力を合わせ,理事会・各委員会を中心に,学会誌発行,HP・データベース構築,燃焼シンポジウム,燃焼工学講座,調査研究,夏季研究会,学会表彰,研究委員会,若手・女性コミュニティ創出,会員増強などの事業を推進することで,会員の皆様へのサービスを進めて参る所存です.

 燃焼科学は,人類が直面するエネルギー,環境といった喫緊の課題に対し,その解決に不可欠な役割を担ってきています.本学会は,1955年発足の日本燃焼研究会に端を発し,1991年に日本燃焼学会へと改称され,2010年に一般社団法人化,という長い歴史と伝統を有しており,これまで燃焼に関する基礎から応用まで幅広い研究を推進しつつ,その成果を社会に発信してまいりました.昨今では,カーボンニュートラルの実現に向けた革新的な燃焼技術の開発,水素・アンモニア・e-fuel・SAFなど多様なカーボンニュートラル燃料への対応,次世代エネルギーシステムへの貢献,火災安全への貢献など,本学会への期待はますます高まっています.燃焼科学の学理探求の深化と産学連携による技術的課題解決への応用,そして,AIに代表される新分野や異分野との融合により,燃焼技術を通した持続可能社会の実現に向けてさらなる燃焼科学の可能性を追求して行きましょう.

 学会の大きな役割の一つに,交流の場の提供があります.国内で毎年開催される燃焼シンポジウムは本学会最大の交流の場ですが,そこでは若手ワークショップ・懇親会および女性昼食会も併催され,人材育成と若手・女性コミュニティの発展に力を注いでおります.国際的な交流の最大の場としては,隔年開催される国際燃焼シンポジウムがあります.国際燃焼シンポジウムは学術的な交流の場であるだけでなく,投稿された論文の中から審査を経て,国際誌のProceedings of the Combustion Institute (PROCI)へ掲載がなされるという大きな特徴があります.そして,2025年からはPRIOCIの論文審査対象シンポジウムがAsia-Pacific Conference on Combustion (ASPACC),Mediterranean Combustion Conferences (MCS),U.S. National Combustion Meetings (USNCM),European Combustion Meetings (ECM)にも拡大されました.また,日本燃焼学会は国際燃焼学会(The Combustion Institute)の日本支部でもあるため,本学会員は国際燃焼学会の会員でもあります.そのため,国際燃焼学会主催のシンポジウムに会員資格で参加が可能ですし,国際燃焼学会の理事の選挙権も有しています.このように,日本燃焼学会は国際学会に直接つながっている稀有な学会と言えますので,会員の皆様はぜひこの優位な環境を活かし,積極的な活動を展開されますことを期待します.本学会としては,特に若手の国際的な活動を支援すべく,まずは,韓国や台湾の学会への若手派遣のサポートを開始しております.

 2026年には第41回国際燃焼シンポジウムが京都で開催されます.日本での国際燃焼シンポジウムの開催は,1974年の東京,2002年の札幌に続いて3回目となります.実行委員長の丸田薫先生(東北大),現地実行委員の川那辺洋先生(京都大),林潤先生(京都大)を中心に準備が進められています.また,藤田修先生(北海道大)がプログラム委員長を務められています.ぜひ,多くの発表,多くの質の高い論文投稿を行い,現地参加により熱い議論を行いましょう.

 最後に,学会事業への会員の皆様の積極的なご参加と将来に向けた忌憚のないご意見を賜りますよう,お願い申し上げます.